明恵 夢を生きる

 

明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)

明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)

 

 母のホームを訪ねる際に持つバッグに入れて、電車の中で少しずつ読んだ。

入居以来、心がふさぐ行き帰りだったが、気が向いたときに取りだして読んだこの本は、現実の生活とは別の次元へ私の意識を向けさせてくれた。

 

去年の夏にパリで、信頼する女性から明恵上人の「あるべきやうわ」について教えてもらったのがきっかけである。

 

読んでいる間はいま一つピンとこなかったけれど、読み終わって俯瞰してみると、明恵上人はストイックな生き方と思い詰め方が極まり、霊的な夢を見たのだということがよくわかる。

 河合隼雄の分析は、ちょっと大げさだし、思い入れがあり過ぎると思う。

 

「私は死ぬまでこのホームにいるのね。それが1年先なのか、2年先なのかわからないけれど」

とうとう母が自分からそう言った今日、私はこの本を読み終えた。